1950s FRAME FRANCE AVANT-GARDE NIGHT RANGER
FRAME FRANCEを掘っていくと遅かれ早かれAVANT-GARDEに辿り着く。
その代表格の一つが”Night Ranger”。
卵を倒した様なオーバル型のレンズとそれを囲む角の立ったフレームが融合した圧倒的なビジュアルは異質中の異質であり、数奇者にとっては劇物と言える。
多くを語る必要がない逸品だが、あえて言葉にしようと試みよう。
多くの建築には一般的に曲線と直線の双方が共存している。
生活空間である内には曲線を用いることで「迎え入れられる安心感」を、守る外には直線を用いることで「守られる安心感」を演出する。
それぞれに役割があり必要条件。
この二つの要素の共存がいかにさりげなく視覚的に美しいか否かで建築を評価が別れると言える。
あくまで私の主観だが、この眼鏡の魅力は上記と同様であるかと。
目を迎えるレンズは「内」であり、それを囲うフレームは「外」。
故に内径には曲線を取り入れて「柔らかさと優しさ」を、外径には直線を取り入れて「堅さと強さ」を表現。
そして、曲線を長さの異なる直線を沿わせて丁寧にさりげなく拾うことで、有機と無機相反する互いを統合し、超越的な美しさを生み出している。
ファッションと建築の密接な関係を巧みに表現した例としてHussein Chalayan Autumn / Winter 2000 After Wordsが挙げられる。
そこから20年余りファッションと建築を統合する取り組みは急激に増えているが、今から80年以上前にこの試みが為されていたことを思うと、この1本には単なる物質的価値以上に歴史的価値があるように思えて仕方ない。