メンズファッションの象徴的なアイテムの一つ「レザージャケット」。
モノ単体で魅力に満ち溢れ、着用者にある種の色気を与えるそれは、男性なら一度は憧れを抱く筈。
例に漏れず、私もその一人だが、長らく向き合ってこなかった。
いや、向き合う事ができなかったという表現が正しいかもしれない。
と言うのも私が、女性から羨ましがられる程の白い肌と細く頼りない身体を持つ故である。
Lewis Leather、Schottはたまたメゾンなど、ありとあらゆるレザージャケットを片っ端に幾度となく試してみたものの、腑に落ちない。
袖を通す度に、逞しくて野生的で男臭いフェロモンムンムンの銀幕スターの姿が脳裏に散らき、鏡に映る自分との差異に悲観し、自分が着る服として捉えられなかった。
そんな中で縁あって出逢ったのが、Carol Christian Poellの一着。
正直に申し上げると、Carol Christian Poellに関して知っていたことは名前ぐらい。
掲げるコンセプトやどんな御人が好むのか、何も知らなかった。
ただ、それが功を制した。
無知だった故に、これまでに袖を通した瞬間に脳裏を過ぎる銀幕スターの姿が浮かばず、
鏡に映るレザージャケットを羽織った自分の姿をスッと受け入れることができた。
予備知識がない真っ新な状態だったからこその純粋な衝動。
この一着との出逢いは、永く果てしなかったレザージャケットの旅に終わりを告げてくれたと同時に、忘れかけていた大事な事を思い出させてくれた。